サービス誕生のきっかけは「働くシニアを応援したい」想い
世の中にある数多のサービスは、利用者のお困りごとを解決するためや、需要を叶えるために生まれたサービスがそのほとんど。市場が拡大している家事代行やベビーシッターも、働く女性が増え「子育て」や「家事」のサポートが必要なご家庭が多くなったことから生まれたサービスがほとんどです。
「東京かあさん」も、そうした利用者のニーズに合わせたサービスと思われがちですが、実は、それよりも「働くシニアを応援する」という目的を第一に生まれたサービスなんです。
きっかけは、働くことが大好きなおばあちゃん
きっかけは大好きな88歳の祖母。元気で働き者で、80歳近くまで働いていました。祖父が交通事故で働けなくなったのをきっかけに、家族を養うため居酒屋を始めた祖母。32歳から始めたその居酒屋は、気づけば20年。仕事が楽しかったようです。
60代になっても清掃や、レストランの食器洗いのお仕事など。生活に困っているわけでなくても、お仕事で得た収入で、趣味の日本舞踊やカラオケ、お買い物を楽しんでいました。しかし、いよいよ80代になるとお仕事が見つからなくなり、家でテレビを見ていることが多くなったようです。電話をしても声に覇気がなく「あまり人と会って話してないのかな…」と心配していた矢先、階段から転げ落ち骨折してしまったのです。
お見舞いにいくと「リハビリをしても、お医者さんには、最悪の場合以前のように歩けなくなるかもしれない、と言われた」と肩を落としていました。私も大ショックを受けました。年齢的に怪我をしてもおかしくないのですが、元気な祖母だけは歩けなくなったりするだなんて想像もしていなかったのです。(リハビリを頑張った結果、今は元気を取り戻し、先日も米寿のお祝いをしたのでご安心ください。)
シニアにとって“いきがいのある仕事”は元気の源
私は、祖母の怪我は、仕事を辞めたのが原因なのではないかと直感しました。そんな話を周囲の人にすると「私の父も定年退職後にがっくり元気がなくなって痩せてしまった」「仕事をやめてからうつ病になってしまった」など、同じような経験をした方が何人かいました。
また、知り合いの“アクシィブシニアを絵に書いたような”70代の方の口癖は「働くことが私にとって1番のサプリメント。死ぬまでいきがいのある仕事をし続けて、ぴんぴんころりが理想だよ」でした。働くことは社会とのつながりであり、刺激も受けます。生活にほどよい影響を与える“プレッシャー”は健康にも良いはず。
老後に趣味を謳歌するのもいいけれど、いきがいのある仕事を持って働くことが、シニアにとって元気でいきいきとしていられる、1番のビタミン剤なのではないか。祖母の怪我のときの直感が、確信へと強まっていきました。「アクティブシニアがずっと元気でいてもらうために、就労支援をしたい!」そんな想いが次第と抑えきれなくなり、2017年7月、株式会社ぴんぴんころりを設立。
シニアの悩み「経済的不安」と「孤独」 を解消する
会社設立後、シニアの方にヒアリングをした結果「金銭的な将来への不安」が共通の悩みとして挙がりました。年金暮らしは貯金を切り崩しての生活。漠然とした不安を抱えている人が多いようでした。また、70代になっても働きたいという意欲の高い人がたくさんいました。まだまだ働いて自分で収入を得ることができる。それが自信にもなり漠然とした不安を消すことにもつながると考えました。
もうひとつの問題は「高齢者の孤独」。大好きな祖母ですが、ひとつ、どれだけ言っても直らない困った悪癖がありました。それは高額なプレゼントをたびたび私に送ってくるという行動。そんなに余裕のある生活をしているわけではないなか、ダイヤのネックレスやお着物の帯など、高額なプレゼントばかり。
他にも投資の話など、悪徳業者に騙されている気配を感じる出来事もありました。オレオレ詐欺はじめ「高齢者を騙す悪徳業者は許せない!」という怒りの気持ちがこみ上げてきましたが、悪徳業者を片っ端から捕まえていっても、イタチごっこ。
騙される人がいるかぎり悪徳業者はなくならない。騙される根本的な理由は「寂しさ」なのではないか。高齢者が騙される心のスキを無くしたほうが早いのではないか。そう考え、高齢者の孤独や寂しさを無くしたいという思いも強くなっていきました。
高齢者が平等に活躍できるマーケットを探して
シニアの就労支援事業を行う株式会社ぴんぴんころりの理念は「笑顔の連鎖」。ビジョンは「高齢者の孤独と不安を解消する」となりました。会社を設立後、サービスの形を作るのに試行錯誤しました。
多くの高齢者が平等に仕事をできる場になり、かつ需要がある領域はないかと探していたところ、家事代行の求人で、70代、80代でも現役で活躍されている方がいるというのを知りました。また、家事代行はこれから需要も伸びていく市場。
シニアが第2のお母さんとなるサービス。細かく指示をしなくても、お母さんの裁量でよきように面倒を見てくれるサービスがあったらいいんじゃないか。とメンバーとも盛り上がり「おせっかいな家事代行」という現在の東京かあさんの元になる着想を得ました。
当時考えていたターゲットは主に独身男性。サービスを開始すると、独身男性にも利用されましたが、育児サポートを求める共働き夫婦の需要が高いことがわかりました。また、育児に奮闘する新米ママもまた、孤独と戦っていて、物理的なサポートはもちろん、心のケアも求めていました。
「東京かあさんが来てくれるだけで、自然と心が軽くなって、できないと思っていた家事ができるようになったんです」そう語ってくれた利用者さんは、どんどん笑顔を取り戻していきました。「第2のお母さんが、利用者に寄り添って、育児や家事など幅広くサポートしてくれるサービス」家事代行とは違ったサービスへと進化していったのです。
家事代行でもベビーシッターでもない新しいカルチャー
「子供の世話をお願いしたい」「家事を手伝って欲しい」以外にも「誰か相談をしたい」となど、第2のお母さんに求めることは様々です。家事代行でもベビーシッターでもない新しいカルチャーが1年かけてできあがっていきました。
東京からスタートし、いまでは神奈川県や埼玉県、千葉県など関東圏で展開しています。千葉かあさん、神奈川かあさんと、地域に合わせて名前を変えることも考えたのですが、東京は“都会”の象徴。田舎から離れ、家族を頼りたくても頼れないという、“都会に暮らす人向けのサービスというのが瞬時に伝わるネーミングのため、そのまま使っています。
「シニアの就労支援がしたい」という私の想いと、世の中のニーズが共鳴し、おせっかいなご家庭サポート「東京かあさん」が誕生しました。これからの世の中に必要不可欠なサービスだと信じて、これからも、高齢者と子育て世帯の笑顔の連鎖を広げていきたいと思っています。
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